近畿税理士会所属 |
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■助成金や給付金に税金はかかるのか?
新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受けた事業者や個人に対し、国や地方公共団体から持続化給付金や雇用調整助成金、特別定額給付金など様々な助成金や給付金などが支給されています。これらの助成金等について、課税の有無や計上する時期に注意しましょう。
原則として法人税が加算される
新型コロナウィルス感染症による影響に対するものだけではなく、国や地方自治体では、様々な助成金や給付金(以下、助成金等)などを支給しています。
法人が受け取った助成金等雇用調整助成金や地方自治体独自の休業協力金など)は、課税対象として雑収入に計上します。ただし、消費税は課税されません。
「持続化給付金」は課税されるのか?
新型コロナウィルス感染症拡大によって大きな影響を受ける事業者に対して最大で法人200万円、個人事業者100万円が給付される「持続化給付金」は、法人・個人にかかわらず課税対象として、税務上、法人は雑収入、個人事業者は事業所得等になります。
ただし、現在の売上激減の経営環境においては、経費などの損金のほうが多いと考えられるため、影響は小さいと考えられます。
個人が受け取る助成金等は課税・非課税のものがある
個人が国や地方自治体から受け取った助成金等については、助成金の支給根拠となる法令等や所得税法に規定によって非課税所得となる助成金等以外は、所得税の課税対象になります。
(1)「特別定額給付金」は非課税
国民1人につき10万円が支給される「特別定額給付金」は、支給の根拠となる法令等(新型コロナウィルス対応国税関係臨時特例法)の規定により非課税所得になります。
また、児童手当受給世帯に対して上乗せ支給される「子育て世帯への臨時特別給付金」も非課税となります。
(2)所得税が課税される助成金等
個人事業者の課税所得となる助成金等は、事業所所得、一時所得、雑所得のいずれかの所得として所得税の課税対象となります。
事業所得等になるもの
例えば、持続化給付金や雇用調整助成金、小学校休業等対応助成金、東京都の感染拡大防止協力金などのように、事業者の収入が減少したことに対する補償や支払賃金などの必要経費に算入するべき支出の補填を目的として支給される助成金等は、事業所得等に区分します。
一時所得になるもの
すまい給付金や地域振興券などのように、臨時的に一定の所得水準以下の人に対して支給されるなど、事業に関連しないもので、一時に支給される助成金等は一時所得に区分されます。
雑所得になるもの
事業所得等や一時所得に該当しない助成金等は雑所得に区分されます。
7月1日、国税庁が路線価を公表しました。この路線価とは何でしょう?
相続税・贈与税の基準となる土地価格
相続税法では、土地の価格は時価によるとしていますが、すべての土地を時価評価することは難しく、一般の人にもわかりにくいものです。そこで国税庁が路線(道路))の価格を決め、この道路に面したここからここまでの土地は1㎡あたりいくらになるかをわかるようにしています。
路線価は毎年1月1日時点で算定し、7月に公表され、その年の1月1日から12月31日までの相続税や贈与税を計算する際の土地価格の目安となります。
路線価はどうやって決めるの?
路線価は、不公平がないよう公示価格、売買実例価額を参考に、不動産鑑定士等の専門家の意見も踏まえて決定されます。土地価格は変動するため、例えば年初と比較して年末に地価が急落するようなことがあっても、納税者に不公平が生じないようにあらかじめ低めに設定されています。
土地の価格は、一物四価
土地の価格には路線価のほかに「実勢価格(時価)」「公示価格」「固定資産税評価額」があり、そのため、土地は「一物四価」と言われています。
実勢価格・・・実際の取引で付けられた価格(時価)。
公示価格(公示時価)・・・一般の土地取引や資産評価の目安とすることを目的に、毎年3月に国土交通省が公表する土地の価格。不動産鑑定士の評価を基に、国土交通省土地鑑定委員会が公示価格を決定。
路線価・・・国税庁が毎年1月1日時点で算定した全国の主な道路に面した土地の1㎡当たりの評価額。(公示価格の8割程度)
固定資産税評価額・・・固定資産税、不動産取得税、登録免許税など不動産にかかる税金の基準となる価格。国が定めた「固定資産評価基準」にもとづいて市町村(東京都23区内は都税事務所)が決定した価格。(公示価格の7割程度)
保有資産の見直しを
保有資産の下落は、保有資産の価値、担保価値が下がることになります。自社の保有する土地の含み損が膨らんでいないかなど、資産価値の現状チェックをしてはどうでしょうか。
事業のために一定の機械・装置、器具、備品等(減価償却資産)を購入した場合に、通常の減価償却のほかに、別枠で特別償却や税額控除などが認められる中小企業投資促進税制や中小企業基盤強化税制があります。
制度の適用を忘れていませんか?
税法では、経営に前向きに取り組む中小企業を支援する様々な税制上の特例が設けられています。その中でも、設備投資を支援する代表的な制度に、中小企業投資促進税制と中小企業等基盤強化税制があります。
この二つの制度は、一定の設備投資を行った場合に、通常の減価償却と合わせて特別償却や税額控除等を行うことができるというもので、節税効果や投下した資本を早期回収できるなどのメリットがあります。
具体的には、設備投資に対して30%の特別償却や7%の税額控除のいずれかを選択できるというものです。
ところが、よくわからない、知らなかったなどの理由で、制度の適用を受けていない例もあるようです。これから機械や備品などを購入しようと考えているのであれば、この二つの税制が適用できるかどうかを確認してみてはどうでしょう。
業務に必要な機械・装置やソフトウェアなどが対象になる。
対象となる資産は、その事業年度中に取得し、かつそれが事業に使用されていなければなりません。また、新品の資産が対象であり、中古の資産は認められません。
対象となる資産の詳細は、財務省令で定められていますが、一読しただけでは該当するかどうかよくわからないものもあります。適用考える場合には、まずは資産の詳細がわかる契約書や見積書、請求書、カタログなどの書類をきちんと保存しておきましょう。
1.機械装置の例
自社が業務で使用するものが対象になります。例えば、機械メーカーが販売用に製造した機械や、レンタル会社が貸付用に保有している資産などには、適用できません。
2.ソフトウェアの例
業務用に使用するワープロ、表計算、経理、給与のソフトや、イラスト、画像、 CAD のソフトなどが対象になります。
3.器具、備品の例
コピー機能やファックス機能、プリンタ機能のスキャナ機能といった複合的な機能を有する一定の条件を満たしたデジタル複合機などが対象です。
4.普通貨物自動車の例
実際にその自動車を貨物の運送に使っている。普通自動車である。車両総重量が3.5トン以上である。
特別償却と税額控除はどう違う?どちらが有利?
二つの税制の優遇措置には、特別償却と税額控除がありますが、どのように違うのでしょうか。また、どちらが有利なのでしょう。
1.特別償却
資産の取得価額の30%を、通常の減価償却費とは別に追加計上することができます。その資産の使用を開始した事業年度の減価償却費を通常よりも多く計上できるため、納税額が少なくなります。
2.税額控除
取得価額の7%を、その事業年度の法人税額から控除します(法人税額の20%が限度)。資産を使用開始した事業年度の法人税額が税額控除の分だけ少なくなります。
3.どちらが有利か?
特別償却の場合は、初年度の減価償却費は大きくなりますが、資産の耐用年数を通じた全体の減価償却費は、特別償却をしない場合と同じです。したがって、初年度の償却額が大きい分、次年度以降の償却額が少なくなります。
税額控除は、減価償却費に関係なく、法人税額から控除するため、長い目で見ると、特別償却より有利なこともあります。しかし、赤字や法人税額が小さい場合には、税額控除限度額を使いきれないこともあります。
当期は利益がでているが、来期以降大幅な利益の減少や赤字が予想される場合、利益があるうちに特別償却を選択して、税額を減らすことが有利な場合もあります。いずれにしろ、どちらが有利かの判断は、各企業の事情によって異なるため、十分な検討が必要になります。
自社の現状を把握するSWOT分析 売上が落ち込んでいる、業績が上がらないという会社が増えています。現状打開のために、まず自社の現状の把握を行ってはどうでしょうか。それにはSWOT分析という手法があります。
SWOT分析とは
SWOT分析とは、貴社を取り巻く経営環境を「強み」「弱み(内部環境)」「機会」「脅威(外部環境)」の4つの観点から整理する手法です。
「強み strength」自社が他社よりも優れた・勝てる・得意なところは何か?
「弱み(内部環境)weakness」自社が他社よりも劣った・負ける・苦手なところは何か?
「機会 opportunity」自社にとって有利な・安全な・役立つ市場の変化は何か?
「脅威(外部環境)threat」不利な・危険な・負担増となる市場の変化は何か?
外部環境(機会と脅威)とは?
外部環境とは自社の努力では解決やコントロールできない社会環境のことで、経済・業界の動向、市場のトレンド、技術革新、顧客ニーズ、法令改正などがあります。これらの要因が自社に有利か、あるいは不利かを考えます。
機会の例
・エコ・環境対策関連商品の市場拡大
・同業者の倒産による市場拡大
・高額・高品質商品の需要の高まり
・健康志向の高まりで健康関連市場が拡大
・高速道路開通による観光客増加など
脅威の例
・原材料費の高騰
・規制緩和によって他業種からの参入が急増
・官公庁からの発注が減少
・親会社の経営不振によるリストラ・コストダウン
・ライバル社や大手企業の進出
・自社商圏の経済の地盤沈下など
内部環境(強みと弱み)とは?
内部環境とは、自社の努力で解決やコントロールできる経営資源のことで、技術力、人材、ブランド力、生産性、品質などがあります。それらの要因が自社の目標を達成する上で強みあるいは弱みになります。
強みの例
・大手が苦手とする小ロットの注文に強い
・古くからの優良顧客が多い・顧客に商品名が知れ渡っている
・早くから投資をしていたので IT 技術のインフラがある
・エコ型新商品の開発に成功
・ ISO を取得している
・新技術による経営革新を都道府県に申請し承認されている
・金融機関からの借入金が比較的少ない
・社長の顔が広く情報キャッチが早い
・短期・中期経営計画を立て予実管理ができているなど
弱みの例
・償却間近の老朽設備が多い
・カタログ販売が中心で営業力が弱い
・主力商品の需要が低下傾向にあり、それに変わる目玉商品がない
・独自技術が少なく、他社依存が多い
・ IT 環境はあるが使いこなす人材がいない。
・経営に計画性がない、経営計画を立てていない
・毎月の業績数値がすぐにわからない
・いつも資金繰りに追われている
・社内のコミュニケーション不足に起因する顧客クレームが多い
・中高年社員が多く、平均年齢も高い
SWOT分析は、一般に、外部環境の脅威、次に機会の分析から行い、そして内部環境の弱み、最後に強みという順序で分析します。
分析にあたって気を付けたいのは、強みと弱みは絶対的なものではなく、ある時点では強みであっても、弱みに変わってしまうこともあります。
あるいは大企業と比較すると弱みばかりになったり、反対に自社よりも小さな企業であれば、強みが多くなってしまいます。
また強みや弱みのとらえ方が社長と従業員で異なることもあります。
例えば、飲食店などで、社長は、味が強みと考えていたが、現場の従業員は、まず立地のよさが強みだととらえていたなどです。また、同じ環境変化でも機会になる場合と脅威になる場合があります。
省エネの対応という外部環境を例にとると
・省エネ技術のある企業→市場拡大の機会
・省エネ技術のない企業→コストアップの脅威
SWOT分析は社長1人で考えるのではなく、客観性を高めるためにも従業員の意見や仕入先、得意先、金融機関、顧客など外部者の評価なども参考にします。
SWOT分析によって、自社の強み、弱み、脅威、機会を把握することは、経営革新や経営改善計画の作成を進める上でも重要なことですので、定期的に会議等で従業員と一緒にディスカッションしてみてはいかがでしょうか。
「損益分岐点売上高」とは、損益がトントンつまり、経常利益がゼロになる売上高のことをいいます。
実際の売上高が、損益分岐点売上高を超えていれば、黒字で利益が出ていることになり、下回っていれば赤字で損失が出ていることになります。
また、実際の売上高があと何%減少したら経常利益がゼロになるのかを知るための指標に「経営安全率」があります。この数値が高いほど不況に耐える力が強いと判断されます。実際の売上高と損益分岐点売上高をチェックしてみてください。実際の売上高が損益分岐点売上高を下回っていたり(経営安全率の数値がマイナス)、あるいはその差が実小さいときには、次のような改善ポイントが考えられます。
①限界利益率を高める(変動費比率を下げる)
②固定費を減らす
③売上高を増やす
1.限界利益率を高める(変動費率を下げる)
限界利益率が下がった、あるいは変動費率が上がっていれば、その原因を調べて改善可能どうかを検討します。原因には、次のようなことが考えられます。
限界利益率が下がった原因の例
・販売数を増やすために、値引きが増えている。
・低価格競争に陥っている。
・外注費が増えている。
・不良品やロスが増えている。
・原材料の値上がりや使用量の増加がある。
2.固定費を減らす
「固定費増加率」をチェックしてみてください。固定費が増加していれば、その原因を調べて改善を検討します。
固定費のうち、人件費を抑えるには、パート、アルバイトの活用や内製から外注への移行などが考えられます。人員配置の見直しや公的助成金の活用なども検討しましょう。
固定費増加の原因の例
・減産によって不要となったり、休止している設備等の維持、管理費がかかっている。
・作業効率の悪さから人件費等が増えている。
・交際費、交通費、広告費などが必要以上に増えている。
・前年や予算と比べて増加している経費がある。
総費用に占める固定費や変動費の割合は、業種や業態によっても異なります。固定費が大きく変動費が小さい、反対に変動費が大きくて固定費が小さい業種もあります。
同じ製造業でも、自社で製造設備を多く持つ自社生産型では、固定費の割合が高いため、自社設備や人件費など固定費の削減努力が重要になります。一方、外注(アウトソーシング)の割合が大きい外注生産型では、固定費の割合は小さいが、変動費率が高いため、外注先の見直しなど、変動比率を低下させる努力(限界利益率の改善)が必要です。
3.売上を増やす
厳しい状況にあって売上を伸ばすのは並大抵のことではありません。しかし、損益分岐点売上高を超えるだけの売上を確保しないと企業は継続していきません。自社の損益分岐点売上高を把握し、目標とする利益を出すには、最低限いくらの売上が必要かを明確にした上で、それを達成するには(いつ、どこで、何を、いくら売るか、その方法は…)などの具体的な行動計画を立て、実行していきましょう。
●消費税の実務(非課税、不課税、免税の違い)
消費税の実務では、非課税取引、不課税取引、免税取引についての誤りが多く見受けられます。これらはいずれも消費税のかからない取引ですが、その判断を間違えて処理してしまうと消費税額を正しく計算することができません。
消費税は、会社や個人事業者が日本国内で、商品・製品を売買したり、サービスを提供したり、経費を支払ったり、事業用設備を売買したり、権利やノウハウの貸し借りや輸入などをした時にかかる税金です。これら消費税がかかる取引のことを課税取引といいます。反対に、消費税がかからない取引には、非課税取引、不課税取引、免税取引の三つがあります。これらの取引は、消費税がかからないという点では同じですが、それぞれを正しく処理しないと、消費税額に影響します。
1.非課税取引-法令で課税しないことにされている取引
本来は、課税取引になるものですが、課税対象としてなじまないものや社会政策的配慮からあえて法令で非課税としている取引です。
主な非課税取引の例
・土地の譲渡と貸付、住宅の貸付(家賃)
・有価証券の譲渡
・貸付金、預貯金の利子、信用保証料
・カード会社に支払うクレジットカードの手数料
・切手、印紙、証紙の譲渡(金券ショップでの購入を除く)
・出産費用、埋葬料と火葬料
・法令に基づく国、地方公共団体等の手数料
・社会保険診療等など
2.不課税取引-消費税と関係のない取引
原則として、国内で行われる取引と輸入取引は課税取引として消費税がかかりますが、これらに該当しない国内で行われる取引、寄付や贈与など対価を得ない取引などを不課税取引といいます。これは、消費税という枠組みの外で行われる取引であるため消費税がかからないのです。そのため、不課税取引は、消費税額の計算に全く影響しない取引になります。
主な不課税取引の例
・給与・賞与の支払い、出向社員の給与負担金
・冠婚葬祭時の祝い金、見舞金、ご祝儀、香典
・資産の無償での貸付・損害賠償金、交通事故の示談金
・贈与(自家消費などは除く)や寄付金・税金の支払い
・株式配当・受取保険金など
3.免税取引-法令で税率0%にしている取引免税取引は本来は課税取引であるけれども、税率を0%にし、消費税を免除にしている取引です。輸出売上や外国の事業者等に対するサービスなど輸出類似取引がこれにあたります。
それぞれの取引について、それが課税か非課税、不課税かなどを判断するのはなかなか難しいのが実情です。そのため自社でよく行う取引については、あらかじめ判定の一覧表などを作成しておくとよいでしょう。以下に間違いやすい例を挙げてみました。
①出張の日当、交通費、宿泊費などは、国内か海外かで異なる
原則として海外出張の費用は不課税です。
国内出張・・・課税取引
海外出張・・・不課税取引、ただし次のようなものは課税
・国内での出発前、帰国後の宿泊費、交通費を別途支給
・成田、関西、中部国際空港など出国者が支払う旅客サービス施設使用料など
・出張先への土産物を国内で購入した時、など
②冠婚葬祭の費用は、金銭支出が物品購入かで異なる
・冠婚葬祭についての費用は、金銭の支出か物品を購入して贈るかによって異なります。
・祝い金、見舞金、香典など・・・不課税取引
・花束、花輪、果物等の贈答・・・課税取引
③接待ゴルフの費用には不課税のものも含まれている。
接待ゴルフのプレー代金はおおむね課税取引になります。ただしゴルフ場利用税は不課税です。
・ゴルフのプレー代金・・・課税
・ゴルフ場利用税・・・不課税
・キャディー等へのチップ・・・不課税
・ゴルフコンペの賞品購入・・・課税
④ガソリンと軽油では消費税の処理が異なる
ガソリンスタンドで給油する場合、ガソリンと軽油では消費税の処理が異なります。ガソリン代は課税仕入れになりますが、軽油は、軽油購入代金のうち、軽油引取税部分については不課税取引になります。
非課税取引と免税取引の違いは、仕入れ税額控除など、消費税の計算に影響します。
非課税取引・・・非課税取引にかかった消費税を仕入税額控除することができません。また、課税事業者の判定の売上高の計算に含めることができません。
免税取引・・・免税取引(輸出等の売上)のための仕入れにかかった消費税を仕入れ税額控除することができます。また免税点制度や簡易課税制度の適用上限の判定には、課税売上高の計算に含めます。
不課税取引・・・消費税とは関係のない取引であるため消費税額の計算に影響しません。
●消費税の処理ー誤りの多いリース取引・返品等
消費税の処理ではリース取引や返品等において間違いが多くありましたが、一方、消費税の価格転嫁については、「中小企業における消費税の価格転嫁に係わる実態調査」によると、62.7%の事業者が全て「転嫁できている」と回答し、前回の引き上げ時より大幅に改善しました。
1.リース取引における誤り
事例1
A 車はコピー機や車両をリース(オペレーティングリース取引)により賃借しているが、コピー機は経過措置の適用対象で、車両は経過措置の適用対象外のため、施行日(平成26年4月1日)以後、消費税率を5%と8%に区分する必要があったが、経過措置適用のコピー機のリース料についても8%で処理していた。
解説
コピー機については経過措置適用のオペレーティングリース取引なので、、4月以降のリース料は5%で処理しなければなりません。車両については経過措置不適用なので平成26年3月31日までのリース料は5%、同年4月1日以降のリース料は8%となります。 ※オペレーティングリースとは、残価査定額がリース料から控除されるファイナンスリース取引以外のリース取引をいいます。このリース取引の場合、指定日(平成25年10月1日)前に契約し、一定の要件を満たせば経過措置の適用を受け、施行日(平成26年4月1日)以後も消費税は5%となります。
事例2
B 社は会社の営業車3台をリースにより賃借していたが、そのリース取引が経過措置の適用を受けないオペレーティングリース取引にもかかわらずファイナンスリース取引として認識して、施行日以後のリース料も消費税率5%で処理していた。
解説
営業車3台のリース取引は経過措置不適用のオペレーティングリース取引なので、施行日以後のリース料は8%で処理しなければなりませんでした。この事例ではリース契約の内容をよく確認しておくことが必要でした。
※ファイナンスリース取引は、原則的には売買取引とされ、リース資産引渡時点の消費税率が適用されます。特例的に認められている支払のたびにリース料を費用計上する場合でも、リース資産の引渡し時点の消費税率が適用されます。
2返品、値引等の際の誤り
事例3
卸売業のc社は、平成26年3月10日に商品Eを得意先に販売納品したが、4月に入ってその得意先から返品の要請があり、今後の取引もあることなので4月20日に返金を受け消費税率8%で処理した。
解説
商品Eについては経過措置により消費税率5%で返品処理しなければなりません。というのも、施行日前に売上計上した商品等が施行日以後に返品となった場合、売上を計上した時点の消費税率で返品処理することになるからです。
事例4
製造業でD社は、平成26年2月に受注し製品を3月に納品して売上も計上したが、後日、注文数に食い違いが生じクレームとなった。結局値引きすることで決着したが、対応に手間取り値引き処理が4月になったので消費税率8%で処理した。
解説
この場合の値引き処理は、経過措置により消費税率5%で行わなければなりません。というのも、施行日前に売上計上した商品等については、売上計上した時点の消費税率で値引処理することになるからです。
消費税の処理の間違い防止に向けたチェックリスト
①施行日をまたぐ取引について税率に誤りはないか請求書をよく確認しているか
②返品や値引き等で、税率に誤りがないよう返品等の商品等の販売(仕入)時点等を確認した上で処理しているか
③リース取引についてはその契約の内容を確認しているか
④クレジットカードの請求書がある場合、領収書、利用明細票等により各取引の消費税率を確認しているか
※旧税率が混在している場合があります。
強い経営のためには、設ける力ともいうべき収益性や人・モノを活かしてどれだけ効率的に売上・利益を獲得できているかという生産性を表す数値をチェックすることが重要です。
会社の数値を見る際、売上目標を達成したか、売上や利益や何%伸びたか、利益はどれだけ増えたかなどは経営者の最も気になるところであり、最も基本的なチェック項目といえます。これらは過去の数値と比べてどれだけ伸びたかという「成長性」を表しています。
それに対して、いくらの元手(お金、資本)で、どれだけ儲けることができたのか?人、モノを活かして、どれだけ効率よく売上、利益を稼ぐことができたのか?を判断するのが「収益性」や「生産性」を示す指標です。その代表的な項目には次のようなものがあります。
・総資本経常利益率(%)
・1人当り加工高(限界利益)
・労働分配率
1.儲ける力はあるか?総資本経常利益率をチェックする
・高いほど収益性が高い(儲ける力がある)
これは、どれだけの資本(負債+純資産のこと)を事業に投入して、どれだけの経常利益を獲得できたのかを表す指標です。この数値が高いほど、少ない資本で多くの利益を獲得した(収益性が高い)ことになります。次のような点を検討してみましょう。
・前期と比較してどうか
・同業者の平均値と比較してどうか
・過去数年間の推移を時系列で見て、高まってきているか、低下してきているか
総資本経常利益率は金融機関も注目する数値で収益性分析の入口ともいわれます。この数値が低い場合には、その要因を調べる必要があります。
総資本経常利益率が低くなる要因をチェック
・滞留売掛金が増えていないか?
・手形の回収サイトが伸びていないか?
・手形割引料が増えていないか?
・借入金増加により、支払利息が増えていないか?
・不用不急となった資産・設備(ゴルフ会員権、有価証券、老朽化した機械、遊休地)はないか?
・貸付金、仮払金、立替金が増えていないか?
・販売数量、販売単価が下がってきていないか?
・仕入原価、仕入コストが上がっていないか?(製造業であれば、材料費、外注費などの製造コストが上がっていないか?)
・販売費及び一般管理費(水道光熱費、広告宣伝費、通信交通費、接待交際費などの諸経費)が増えていないか?など
2.従業員1人が生み出した限界利益は?1人当り加工高(限界利益)をチェックする
・生産性で最も重要な指標
・数値が高いほどよい
これは、従業員1人がどれだけ限界利益を生み出したかを見る指標で、この数値が高くなるよう常に改善が必要です。この数値を時系列で推移を検討したり、同業者と比較したりすることで自社の生産性の善し悪しを判断します。
特に、決算書の売上や利益の数値は総額で表示されていますので、この1人当たりの数値は、生産性の向上をはかるうえで重要なヒントになることがよくあります。
※限界利益とは、売上高から変動費を差し引いた利益であり、一般に、非製造業では粗利益と合致します。
3、人件費の水準は適正か? 労働分配率をチェックする。
労働分配率が低く、1人当たり人件費が高い状態が理想労働分配率は、高ければ高いほど人件費の負担が大きいことを意味します。この比率が年々増加している、あるいは同業他社や業界平均と比べて高い場合には注意が必要です。
だからといって、労働分配率を抑えるために、極端に人件費を減らせば、社員のモチベーションの低下につながります。また、人件費の世間相場もあります。そのため、一定の抑制を加えながらも生産性を向上させる努力がどうしても必要になってきます。生産性を表す数値が低い場合には、いろいろな点をチェックしてみてください。
生産性の数値が悪化する一般的な要因をチェック
・人件費が世間相場より高すぎないか?
・福利厚生費が高すぎないか?
・社員のモチベーションが下がっていないか?
・人員が多すぎないか?
・設備等が過剰になっていないか?
・設備が老朽化し、生産効率が下がっていないか?
経営において、月次決算行うことが不可欠です。月次決算の数値から業績を掴むには変動損益計算書が有効です。
毎月の業績は変動損益計算書から掴む
月次決算で業績を掴むには、変動損益計算書活用するとわかりやすいです。
損益計算書と変動損益計算書の違い
通常、損益計算書は、まず売上から売上原価を引いて売上総利益を算出し、さらに販売費等の経費を引いて、経常利益を算出します。
これに対して変動損益計算書では、原価や経費等全ての費用を、材料費のように売上の増減に伴って増減する変動費と、人件費、家賃のように売上の増減に関係なく発生する固定費に分けます。
そして、売上高から変動費を引いて限界利益を算出し、さらに固定費を引いて経常利益を算出します。
また、売上高に占める限界利益の割合を限界利益率(限界利益÷売上高)といいます。
変動損益計算書は業績判断に役立つ
変動損益計算書は、売上の増減に比例して限界利益が増減するため、損益計算書よりも業績を判断しやすいです。
例えば、売上が20%増えれば、比例して限界利益も20%増加するため、「売上の増減によって限界利益がどれだけ増減するのか」をすぐに掴むことができます。ところが、通常の損益計算書では、売上原価に固定費が含まれるため、売上総利益が売上に比例しないのです。要するに、売上の変化に伴う利益の変化がすぐにつかめません。
また、売上高をさらに「単価×数量」の式に分解すれば、「いくらぐらいなければならないのか(金額ベース)」や「いくつぐらいなければならないのか(数量ベース)」といった検討もできるようになります。
1人採用するには、どれだけ売ればいいのか。
例えば、あるそば屋さんが忙しくなってきたため、アルバイト月10万円で1人雇うかどうか検討しています。
この場合一杯500円のそばを、あと何倍売ればアルバイトの給与分の利益を稼ぐことができると思いますか。
10万円÷1杯500円として200杯ですか。
答えは違います。
正解は500杯です。これは、10万円を一杯あたりの限界利益200円(売上単価500円-変動費単価300円)で終わって求めることができます。このことからも変動損益計算書の活用方法がわかると思います。
通勤手当、旅費交通費は必要な費用ですが、不況に伴うコスト意識の高まりから、それが合理的で適正に支給されているか等の見直しを行う企業が増えています。
通勤手当のチェックリスト
・鉄道、バス等の公共交通機関を利用する社員の通勤手当は、最も交通費が安い経路で申請されているか?
・自動車通勤の場合、合理的な最短経路を申請しているか?
・実際に利用している通勤経路と申請している通勤経路は異なっていないか?
・社員の引越、鉄道料金等の改定、新路線や新道路の開通等に伴う通勤経路や費用の変更をその都度社員に申請させ適正に管理しているか?
旅費交通費のチェックリスト
・営業時の交通費が、通勤経路と重複する区間については、交通費を支給しないことにしているか?
・タクシーを利用した場合は、旅費交通費精算書等に同乗者や事由等を記載させているか?
・出張申請書に、出張の目的、交通手段、費用等を記載させ、その必要性を検討した上で許可しているか?
・宿泊費は、上限を定めて実費精算とし、領収書の提出を求めているか?
・新幹線、航空機等を利用する場合、安価なチケット使用を認めており、実費精算として領収書を提出させているか?
・出張旅費、交通費の精算は、速やかに行われており、申請期日は守られているか?
通勤手当は、税務と社会保険で取扱いが異なります。
通勤手当(現物で支給する通勤定期券を含む)は、税務上は非課税(1ヶ月10万円まで)となります。社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険)については、通勤手当を含めた金額で保険料算定します。そのため、標準報酬月額の算定のもとになる「報酬」には、通勤手当も含まれます。同様に雇用保険も雇用保険料の算定のもとになる「賃金」には、通勤手当が含まれます。
年末が近づくと、パート社員から年間収入の見込み金額などについて聞かれることが多くなるのではないでしょうか?パートで働く主婦にとって気がかりなことは、自分が夫の扶養家族になるのか、ならないのかということです。
年収がいくらなら税金はかからないのか?
パートで働く主婦にとって、まず気になるのは、自分の収入がいくらまでなら税金(所得税、住民税)がかからないのか、税金や社会保険の扶養家族の枠内におさまるのか、ということでしょう。
1.年収103万円以下なら所得税がかからない。
通常、パートの年収が103万円以下で他に収入がなければ、所得税はかかりません。所得税の場合、給与収入から、給与所得控除65万円と基礎控除38万円との合計103万円が差し引かれ、残った金額に税金がかかるため、103万円が1つの目安になります。
2.年収103万円以下でも住民税がかかる場合がある。
住民税は、年収100万円(給与所得控除65万円+住民税の非課税限度額)のラインが一つのポイントになります。
パートの年収が100万円以下でほかに収入がなければ、住民税はかかりません。ただし、市区町村によっては100万円以下であっても、住民税がかかる場合があります。そもそも住民税には所得の額にかかわらず、均等の額を負担する均等割と、所得金額に対して課税される所得割があります。所得割については、年収100万円以下であれば、住民税はかかりませんが、均等割については、市区町村によっては、年収が93万円を超えるとかかる場合があります。
住民税の標準税率は、所得割が10%、均等割が4000円です。
夫の扶養家族の枠内におさまる収入はいくらか
パートで働く主婦にとって、ご主人の扶養家族の枠内かどうかは、気になるところです。
1.パート収入が103万円を超えると夫が配偶者控除を受けられない
妻のパート収入が103万円以下であれば、夫は自身の所得から38万円の配偶者控除を受けることができます。また、妻のパート収入が103万円を超えると配偶者控除を受けることができなくなりますが、パート収入が141万円未満で、夫の所得が一定以下であれば、夫は自身の所得から、配偶者特別控除を受けることができます。
2.パート収入130万円以上で社会保険の扶養家族からはずれる
パートで働く主婦の年収が130万円以上になると、夫の社会保険の扶養家族(被扶養者)からはずれてしまいます。この場合、国民健康保険や国民年金の第1号被保険者に加入しなければならないため、保険料の負担が発生してしまいます。
事業に必要な建物や附属設備、構築物、機械及び装置、車両運搬具、工具、器具及び備品などの減価償却資産は、通常、法定耐用年数に応じて、毎年、減価償却費として費用にします。
しかし、少額(10万円未満)のものは、取得時に、その取得価額の全額を経費にすることができます。さらに、中小企業者等については、一つの取得価額が30万円未満の減価償却資産についても、取得時に損金(経費にする)がことが特例として認められています(年間300万円未満を上限)。
売上アップの対策を考える前に! まず売上低下の原因を分析することが重要であります。
1.売上低下の要因を4つの視点で分析する
自社の売上低下の原因は、次の四つに分けることができ、その分類に従って対策を検討します。
①得意先要因・・・主要得意先が売上を落としている。得意先が倒産したなど
②市場要因・・・市場が冷え込み総需要が減少している。
③競合要因・・・競合企業が新規参入者の進出でシェアを食われている。
④内部要因・・・社員が退社した。モラルが低下している。
これらの要因は一つとは限らず、複合している場合が多いため、何が一番影響しているかを掴まなければなりません。それらの要因の違いによって対策が違ってくるからです。容易に市場要因だけを売上低下の言い訳にしてはいけません。
2.商品別、得意先別、流通経路別の特徴をつかむ
すべての商品、得意先が売上を落としているということはあまりなく、多くの場合、売上を伸ばしている商品、得意先はあるものです。その実態と原因を明らかにすることが有効な対策に繋がります。商品、得意先だけでなく、地域別、流通経路別、用途別、セールスマン別にとらえることも必要です。
また、得意先別・商品別の分析など、複合的な分析も可能な限りやってみます。得意先ごとにどの商品が貢献していて、何が足を引っ張っているかがわかれば問題点が見えてきます。
下請加工業などでは、得意先の経営が良くならないと当社も繁栄しないケースもあります。得意先が二次下請けで、当社が三次下請けというような場合にはなおさらです。得意先の受注回復の見通しがない場合には、伸びている得意先を開拓するか、現在の技術を生かせる新たな分野に転向することを考えなければなりません。
●資金の流れをつかみ、資金繰り改善をしよう
資金繰りに悩む会社が増えています。当面の資金繰りについて、多くの経営者は頭の中の計算や簡単な資金繰り表などで、大まかに入出金の予定を掴んでいると思います。しかし、それだけでは、資金繰りが苦しくなる原因まで掴むことができません。
帳簿上の「利益」と実際にある「資金」は一致しない
「売り上げや利益は伸びているのに資金繰りが苦しい」「資金がないので、てっきり赤字で納税しなくていいと思っていたら黒字だった」といった経験はないでしょうか。あるいは黒字倒産といった言葉があるように、黒字企業が資金繰りに詰まって倒産してしまう例も多くあります。
これらは、帳簿上の「利益」と実際の「資金」の有高が一致しないことにその理由があります。まずは、そのことをしっかりと念頭においてください。仮に、すべての取引が現金で行われていれば、利益と資金は一致します。しかし、通常は、掛けなどの信用取引が行われることから、売掛金の回収や買掛金等の支払いが行われて、利益が資金として会社に残るまでの間にズレが生じるため利益と資金が一致しません。
売掛金は、売上はあがったけれど、まだ資金が会社に入ってきていない状態です。その間に仕入代金や経費の支払い、借入金の返済などによって資金が減っていくために、資金不足になるわけです。そうなると、銀行からの新たな借入れや、固定資産の売却などによって資金を調達しなければならないのです。
本業の資金の流れと本業以外の資金の流れ
資金繰りを改善するには、まずは自社の資金の流れを知る必要があります。
資金の流れには、売上代金の入金、仕入代金の支払いなどの本業における資金の出入りと、借入れによる入金、固定資産の購入代金の支払いなど、本業以外の資金の出入りがあり、このような資金の出入りの結果、手許の現金、預金が増減するわけです。
本業によって得た資金は黒字になっていますか?
本業の資金の流れは、売上代金の入金などの「経常収入と、仕入代金や経費の支払いなどの経常支出」として表され、この経常収入から経常支出を差し引いた金額が本業によって得た資金になります。これを経常収支といいます。まずこの経常収支が黒字(プラス)でなければなりません。
「経常収入」
・売上代金の入金
「経常支出」
・仕入代金の支払い
・原材料費の支払い
・外注費の支払い
・人件費の支払い
・家賃などの経費の支払い
「経常収支」・・・本業によって得た資金経常収支=経常収入-経常支出
もし経常収支が、赤字(マイナス)であれば、本業において、入金よりも支払いのほうが大きい状態になるので、当然、この状態が続くと資金繰りが苦しくなります。この経常収支が黒字(プラス)で、その額が大きいほどよく、それが借入金の返済や設備投資の原資になるのです。
チェックポイント
・売掛金残高を取引先別に確認しているか?
・不良債権の有無を確認しているか?
・取引先との取引条件の変更はないか?
・回収が遅れがちの得意先はないか?
・売上が落ち込んでいる商品、主力商品の動向を把握しているか?
・買掛金残高を仕入先別に確認しているか?
・不要、不急の仕入をしていないか?
・仕入先との取引条件が自社によって厳しい条件になっていないか?
・不良在庫が増えていないか?
・仕入原価、コストが値上がりしていないか?
●現金管理の心得
現金管理を適正に行うことは、会社規模の大小にかかわらず、経営の基本であり、税務調査でも厳しくチェックされる点です。
金庫内の現金は、1日1回、金種ごとに数え、実際の現金有高と帳簿残高が一致することを確かめます。ところが、社長が、会社の小口経費を立て替えてたり、反対に、個人的な支払のために会社のお金を借用する場合があります。この場合、精算が行われなかったり、ルールにもとづいて現金処理が行われなかったために帳簿上の現金と実際の現金が合わないことがあります。
この状態は、社長の公私混同を招くだけでなく、社内の気の緩みを引き起こし、社員による不正も起こりやすくなります。
現金管理のポイントは、社長個人のお金と会社のある現金を厳格に区別し、ルールにもとづいた処理と定期的にチェックを徹底することです。まずは、チェックリストを参考に現状を確認してみましょう。
現金管理の状況をチェックしてみましょう。
1 会社と個人のお金がきちんと区別されており、社長が直接現金の受け払いをしていない。
2以外の人が現金の管理責任者として明確に決まっている。
3金庫と鍵は管理責任者が管理している。
4銀行印は社長が保管している。
5毎日の出納締め後に「現金収支日報」などを作成し、管理責任者の承認を得る仕組みになっている。
6管理責任者は、月に数回、帳簿上の残高と実際の現金残高とが一致しているかをチェックしている。
7現金(または小切手)による集金、現金売上などは、その日のうちに銀行に預けている。
8現金残高はなるべく少額にし、余分な現金は銀行に預けている。
9売掛金等の入金は、銀行振込にしてもらっている。
10現金で支出するものの範囲に、一件当りの支出限度額を決めている。
11経費などの支払で一定金額以上のものは銀行振込にしている。
12支払は領収書、請求書をもとに行っている。慶弔金など領収書がもらえないものは、社内発行の「支払証明書」などを使用している。
13正規の手続きによらないメモ等による現金の支払は禁止している。
14仮払い等は上司等の承認を得ているものに限って支給するようにしている。
15仮払金や旅費の精算は、用務終了後や出張から帰着後、速やかに行うことを徹底している中小企業の資金繰りの環境は依然厳しい状況にあります。資金繰りが苦しくなると金融機関からの借入れを考えがちです。しかし、資金繰りが苦しくなる状況に対して、経営改善の余地はないかを検討してみましょう。運転資金不足で金融機関からの借入れに頼らざるを得ない状況もありますが、日頃から自社の資金繰りを悪くしている要因を洗い出し、改善をはかることも必要です。
●資金繰り改善のポイント
受注先の支払条件を見極めて受注
改善ポイント
1.外注先、仕入先に実勢価格に合わせた値下げ交渉を行い、値下げできない場合には支払いサイトを延ばしてもらった。
2.原則は自社製造として、急な受注の場合のみ外注に依頼することにして、外部への支払いを減らした。
3.営業担当者には、赤字にしてまで受注しないこと確認した(その結果、受注が減ってもその責任は社長にあると明言した)。
4.大口受注でも、手形支払や回収サイトが長期になる場合は受注を見合わせた。
5.継続受注が見込め、売掛金回収が早期にできる受注先には、通常より粗利率が低くても優先的に受注した。6.中規模に合わせて、工場、倉庫を集約し、余った土地を賃貸にして、賃貸料収入を得るようにした。
適正な在庫管理によって過剰在庫を削減
1.販売データ、在庫管理を徹底して、売れ筋商品を中心とした適正在庫を心がけ、総在庫量の大幅な削減を図った。
2.社長が定期的に倉庫等に出向いて、商品をチェックし、新商品の登場で陳腐化、流行遅れになりそうな商品は、早めにバーゲン等によって処分するようにした。
3.年に1.2回しか売れないような商品は取り寄せ対応として在庫をなくした。
資金繰り改善度をチェックしてみよう。
1.売掛金管理を徹底し、滞留や回収漏れを減らしているか?
2.手形による売掛金回収をやめ、代わりに、利益相当分の売上割引を行うなど、現金による早期回収を図っているか?
3.販売データ・在庫管理を徹底し、商品の売れ筋等を把握し、適量の在庫もつように努め、陳腐化、流行遅れ等の在庫は、バーゲン等で早期に処分を図っているか?
4.工場、倉庫などを集約し、余剰となった土地、施設を売却して資金化や、家賃削減に努めているか?
5.社屋、店舗、工場、機械設備等は購入せず賃貸やリースとすることを検討しているか?
6.設備投資資金は長期借入金でまかなう(短期借入金で行わない)ように努めているか?
7.原価管理にもとづいた価格設定を行い、赤字や薄利の商品や受注の見直し(赤字の仕事を受けない等)を行っているか?
8.資金を流出させるような行き過ぎた節税策(例えば、不要不急の資産・備品等の購入)を止めて資金管理に努めているか?
9.作業工程の見直しや現場の意識改革を行い作業ロスの削減や歩留まり率の改善に努めているか?
10.原材料価格、外注費、賃貸料などの諸費用を見直し、値下げ交渉を行っているか?
在庫を確認しよう
不良在庫なくすためには、定期的な実地棚卸を行い、社長自身が倉庫等に出向いて、確認するようにしてください。なお、不良在庫等の廃棄処分は、原価を損失に計上するため、税務調査において指摘されやすいところです。廃棄処分の際には次のような証拠を残しておくことが必要です。
・社内で廃棄を決済した際の議事録等の書面を作成しておく
・廃棄業者に引き取りを依頼した場合には、証拠書類として業者の受領書をもらう
・破損等の状態がわかるように日付入りの写真を残すなど
個人事業者にとって、12月は決算月になります。そのため、毎月の事務のほかに決算準備のための事務があります。
1.実地棚卸行う
12月の業務終了日における商品、製品、仕掛品、原材料などの在庫数量を種類、品質、型ごとに数えて確認し、棚卸表を作成します。自社の倉庫だけでなく、取引先に預けている在庫、輸送中の在庫、委託販売行っている商品などの在庫の確認も必要です。
年末が繁忙期であるなど、業務の都合上、12月の業務終了日に、棚卸を実施することが難しい業種もあります。そのような場合は、業務終了日の直近日に実施し、その日から業務終了日までの売上と仕入れの記録をもとに商品在庫を把握します。
・12月の業務終了時点の商品等の実地棚卸を行い、棚卸表などの原始記録を保管しているか。
・取引先等へ預けている商品、原材料や輸送中の商品、委託販売商品などの在庫も確認しているか。
・12月に売上返品された商品なども、棚卸資産に計上しているか。
・引取運賃や購入手数料など、付随費用も取得価額に含めているか。
2.現金、預金等の残高を確認する
12月末時点での現金出納帳の残高と実際の現金残高が一致するかどうかを確認します。
銀行預金は、12月末日時点の残高証明書を銀行から入手します。切手等の金券類の残高も確認します。
・銀行預金の残高証明書を入手したか。
・切手、収入印紙などの残高を確認しているか。
3.売掛債権や仕入債務を確認する
売掛金、受取手形、買掛金、支払手形などの残高を確認します。特に、請求書の締め日から、12月末日までの売上や仕入についての売掛金、買掛金の計上漏れに注意します。
・売掛金、受取手形、買掛金、支払手形の残高を確認しているか。
・請求書の締め日から12月末日までの売上、仕入についての売掛金、買掛金等の計上漏れはないか。
・仕入先からの顧客への直送品について、売上、売掛金の計上漏れはないか。
・返品や値引きなどの計上漏れはないか。
4.借入金と債務の確認
12月末時点での借入金や割引手形の残高を確認します。銀行からの借入金は、12月末日時点の残高証明書を銀行から入手します。経費の支払いも請求書より締め日以降の金額を確認します。
・銀行からの12月末日時点の残高証明書を入手しているか。
あなたの会社の直近の売上はどうでしょうか。実績が予算や前年実績より悪くても、「景気が悪いから」で終わらせないで、どのように悪いのか、悪い中にあっても、少しでもいい兆しや変化が表れていないかをチェックしてみましょう。
対前年売上高比率を確認しよう
最新の試算表などの財務データ等から利益などの源泉である売上についてチェックしてみましょう。
売上については、「対前年売上高比率」を確認します。この比率は文字どおり、売上高が前年と比べてどうであったかを表すものです。以下のような点に注意してみてください。
・前年同月に比べて単月でどうか?
・期首から当月までの累計ではどうか?
・増減は一時的なものか?
・同業他社と比較してどうか?
1.上向きの場合
単月でも、期首から当月においても着実に向上していればいいのですが、それで良しとせず、その要因は何であったのかを考えてみてください。外部環境の影響による偶発的、一時的なものなのか、あるいはこれまでの営業政策の効果が表れてきたのかなどをよく分析してみましょう。
反対に、売上が伸びていても、例えば、製造業などでは、原材料費や燃料費などの値上がり分を価格に転嫁できずに今後、利益率が悪化していくといったことも予想されます。
2.低下している場合
低下したから良くないとも一概にはいえません。例えば、粗利益率を改善するために、戦略的に不採算の得意先を切った、あるいは、商品・サービスの見直しなどによる結果であれば、単純に業績の低下とはいえないこともあります。低下した原因を正しく分析することが必要です。
売上の中身を分析しよう
売上の中身を分析してみましょう。何らかの変化の兆しがつかめ、業績向上へのヒントになるかもしれません。
例えば、売上がなかなか改善しない状況であっても、これまで売れ筋でなかったものが売れ始めたり、既存商品に代わって新商品が伸び始めているといったこともがあるかもしれません。売上に結びつかなくても、問い合わせや見積りの依頼が増えてきているといったこともあります。得意先別あるいは部門別、商品群別などで現状をよくチェックしてみても良いでしょう。
業績、業態などにもよりますが、一般に次のような項目をヒントに、変化の兆しがないかをチェックしてみましょう。
変化の兆しの一例
・これまで取引がなかった新規顧客や業者などから問い合わせや引き合いが増えてきた。
・国内の取引先は海外へシフトしてしまったが、反対に海外からの引き合いがある。
・見積の依頼や商品の問い合わせなどが増えてきた。
・新規顧客は伸び悩んでいるが、リピーターなど固定客への売上が回復しつつある。
・1件当たりの取扱量、取引金額が増えてきた。
・顧客層のうち、若い世代が増えてきた。
・顧客単価は回復していないが、顧客数は回復してきている。
・新商品の売れ筋は芳しくないが、昔からの定番商品の人気が根強く売上は落ちていない。
・インターネット通販など新しい販売方法での売上が伸びてきている。
・低価格商品よりもワンランク上の価格帯の商品が売れ始めている。
・機能性、付加価値の高い商品の売上が伸びている。
・個人向けの商品は回復していないが、法人向けが売れ始めた。
チェックしてみることで、これまでの社長の考えとは異なる変化が見つかるかもしれません。何かいい兆しに気が付いたら、それを次の打ち手に活かしていきましょう。
●売上があるのになぜ資金がない?
経営者が資金繰りについて感じる疑問に、お金がないのにどうして数字の上で利益が出ているんだろう?売上は上がっているのにどうしてお金がないということがあります。このように会社の金庫や銀行預金にはお金がないにもかかわらず、売上や利益が上がっていることを疑問に思ったことはないでしょうか。経営者の多くは、きちんとした資金繰り表を作成していなくても、この支払いはいつで、この入金はいつ入るといったお金の出入りを、頭の中である程度は掴んでいます。そのようなやりくりの中で、「会社にお金があるか、ないか」で、「利益がある、ない」と考えがちです。
しかし、会計でいう利益とは、今会社にお金がどれだけあるか、ということとは少し違うのです。お金の動きと利益が合わなくなるのは、会計では次のような決まり事があるためです。まずはその点を理解してください。
お金と利益の関係
・売上があっても、代金が手形や売掛金であれば、それが回収されて入金されるまでは、会社にはお金がない状態になります。しかし、会計では売上が上がった時点で、売上が計上されます。
・借入金を返済すると、会社のお金は減ります。しかし、会計上は借入金の返済は経費にならないため、利益も少なくなりません。これはもともと、借り入れたもの返すだけだからです。反対に借り入れ時は、お金は増えるけれど、売り上げや利益にならないことと同じです。
・設備投資で、機械設備、自動車等の固定資産を購入すると購入代金分のお金は減ります。しかし、会計ではその購入代金分だけの利益が少なくなるということはありません。固定資産を購入した場合は、減価償却という方法で数年分に分けて経費にしていくことになります。
利益とお金の動きはどうして会わないのか?
会社のお金と利益が一致するのは、現金商売で無借金の場合です。しかし、一般に企業活動では、仕入代金、給与や経費の支払い等で、売上の入金よりも先にお金が出て行くことが多いため、会社にお金がないという状態になりがちです。
売掛・買掛による売買の場合
利益が出ていても、売上代金が未回収のため経費の支払分だけ資金が早期に必要になります。
資金と利益が合わないことを前提に改善を検討する。
大切なことは、お金と利益が合わないことを前提に、その状態の度合いによって、どのようにすれば資金に余裕が生まれるかを考えることです。例えば、借入金が大きのであれば、借り換えを検討したり、売掛金が3ヶ月も先であれば、一部を前受金でもらう交渉をする等、前向きな改善を図りましょう。
資金繰り改善のための検討ポイント
①売掛金の回収を早くできないか。
②仕入債務の支払いをできるだけ伸ばすように交渉できないか。
③借入金の借換はできないか。
④受取手形を減らす、あるいはなくせないか。
⑤支払手形を使用することはできないか。
●月次決算を定着させよう
企業が、毎月の業績を正しく掴んで、経営に役立たせるためには、月次決算が不可欠ですが、月次決算が定着している中小企業は多くありません。しかし、金融機関が融資にあたって、正しい計算書類やこれに基づく経営計画を求める時代になりつつある現在、中小企業には、これまで以上に月次決算体制を確立することが求められています.
月次決算の精度を高める
A社は、毎日の現金残高合わせや帳簿の記帳(入力)、証憑書類の整理保存等をしっかりできて、売上(売掛金)、仕入(買掛金)取引が発生主義で記帳できるようになっています。ここまで発生主義ができれば、月次決算体制は8割ぐらいできています。
今日は、売上、仕入取引以外、例えば経費等でも毎月の損益に影響するような金額の大きいもの、重要なものについても発生主義で計上することをご説明します。
1.未払い経費等を月末に計上する。
現金主義では、広告宣伝費等の販売費や、一般管理費(家賃、リース料、電話料、水道光熱費、社会保険料等)は、実際に支払った月の経費に計上されています。しかし、通常、発生した月と実際に支払う月にズレが生じるために、月次の損益に影響を与える経費等もあります。そのような経費等については、請求書や納品書、契約書などをもとに未払金や未払費用として、発生した月に計上します。
2.年払いの経費等を月割計上する。
労働保険料や固定資産税、損害保険料等年払いや特定の月にまとめて支払う経費や賞与の中には、特定月の経費が多額に計上されることで、月次の損益に影響するものもあります。このような経費を月割計上(賞与は年間の見積額を月割計上)することで、発生額か平準化され、労働保険料の支払月や賞与支給月に費用負担が集中し、月次の損益が大きく変わるといったことを回避することができます。
3.毎月、在庫計上する。
月初、月末の在庫計上することで、毎月の売上原価と粗利益を掴むことができます。正確な月末の在庫把握するには、毎月、実地棚卸を行うことが理想ですが、なかなか容易ではないと思います。そのため、予定原価率を用いて概算計上したり、棚卸の対象とする商品を毎月変えたり、金額の大きい商品に絞る等の方法もあります。
4.減価償却費を月次で計上する。
機械装置や車両、建物等の減価償却費は、期末に計上しますが、年間の見積額をもとに12分の1づつ、毎月、月割計上します。これによって、減価償却費の計上を平準化して、毎月の業績に反映させることができます。
月次決算のステップ・バイ・ステップ
ステップ1 会計処理の基本
①毎日の現金残高合わせができていますか。
②帳簿への記帳(入力)が適時、正確にできていますか。
③証憑書類の整理保存がきちんとできていますか。
ステップ2 発生主義による月次決算
④売上を出荷、相手方の納品時に計上し、仕入を入庫時に計上できていますか。
⑤毎月の在庫を実地棚卸や概算計上等の方法で把握し、月次の売上原価、粗利益、限界利益)を把握できていますか。
⑥販売費や一般管理費を月次で計上できていますか。
⑦減価償却費の月割計上ができていますか。
⑧固定資産税や労働保険料等まとめて支払う費用を月割で計上できていますか。
⑨売掛金や買掛金の残高管理を行い、請求漏れや入金遅れ、二重請求ミス等の防止や、資金繰りに活用できていますか。
⑩在庫管理を行い、誤発注、誤納品、滞留在庫、紛失盗難、在庫切れの防止等に活用できていますか。
自社の今年の売上や利益の目標に対してどうだったでしょうか。年末にあたり、売上アップに向けた取り組みができたかどうかを自己点検し、来年の行動へのヒントとしましょう。
今年の売上はどうか?
依然、中小企業には厳しい経営状況ですが、その一方で懸命に業績を伸ばしている企業や経営努力によって新たな顧客、市場の開拓に取り組む企業も、決して少なくありません。自社のこの1年はどうだったでしょうか。全体として売上はよかったですか、悪かったですか。
・売上目標に対してどうか。
・去年の売上と比べてどうか。
・同業他社と比べてどうか。
・社長の感覚としてはどうか。
・売上全体の中で、主力商品・サービスの売上はどうか。
・売上全体の中で、新しい商品・サービスの売上はどうか。
自社の商品・サービスの現状は?
経済全体を見れば、安い海外製品の流入、産業空洞化、顧客ニーズなどの様々な環境変化があります。そういった中で、自社の商品・サービスの現状について、客観的な分析はできていますか。
・自社の主力商品・サービスが陳腐化している、ライフサイクルの衰退期に入っている。
・海外製品などをライバル製品との競争、原材料のコストアップなどで利益率が悪化している。
・新しい技術等の登場によって、自社の技術、ノウハウなどの優位性や特徴が弱くなっている。
・固定客が減少し、新規顧客も増えていない。
・自社の商品・サービスへのリピーター、固定客作りができていない。
・コストダウン等が品質やサービスの低下を招き、クレーム等が増えている。
・納期、メンテナンス、接客応対など品質以外の面での対応が他社と比較して弱い。
・市場や顧客の変化に自社の商品・サービスが対応できていないと感じる。
・新しい商品・サービスが開発できていない。
・これまでとは異なる顧客層や市場、海外進出など新たな販路の開拓ができていない。
売上アップへの具体的な行動はできたか?
売上の低迷や業績の悪化を、景気が悪いという理由で片づけてしまっていないでしょうか。自社の商品・サービスに磨きをかけ、価値を高めたり、新たな顧客層へアピールするなど、今年1年、売上アップの具体的な取り組みはできたでしょうか。
・商品・サービスのリニューアルや機能強化をはかった。
・市場開拓やターゲットを絞るなどで、新たな顧客層にアピールした。
・インターネットなど新たな販売方法に取り組んだ。
・短納期化、クレーム処理、メンテナンスなどの対応を強化し、顧客満足を高めることで、自社のファンを増やしている。
・自社の商品・サービスの特徴を顧客目線でわかりやすく伝えている。
・社長自身が顧客訪問し、顧客のニーズや不満などを肌で感じ取っている。
・売れなくなった商品、顧客ニーズにあわなくなった商品を止めて、新たな商品サービスに資金や人材を投入している。
中小企業の場合は、経営者の努力とともに全社員一丸となった取り組みが業績に良い結果をもたらすことが多いと言われます。
金融機関が、中小企業や融資や貸付条件の変更等を行う際、提出される決算書や経営計画に何を求めているのでしょうか。
決算書では資産の実態、本当の価値を確認する
Q1 金融機関は、融資判断にあたって、企業どのように評価しているのでしょうか。
A 融資判断の基本として、その企業の格付(自己査定)を行っています。まず、お客様から提出していただいた決算書の数値に基づいて評価する定量的分析を行います。
この定量的分析をベースにして定性的分析を加味します。定性的分析では、定量的分析には表れていない、その企業の強みとして将来に定量的要因が改善される要因を評価します。以上の分析方法は、金融庁の「金融検査マニュアル」に基づいています。
定量的分析項目、定性的分析項目の一例
「定量的分析項目」
・流動比率・固定比率
・自己資本比率
・総資産経常利益率
・有利子負債÷自己資本
・売上高
・キャッシュフロー額
・債務償還年数等々
「定性的分析項目」
・技術力
・営業力、販売力
・経営基盤
・経営者の個人資産
・親会社の存在・経営者の資質等々
Q2 決算書については、具体的にどのような点を見ているのでしょうか。
A 金融機関の自己査定の中で、決算書の数値が正しいかどうかを確認していきます。例えば、資本金や借入金、売掛金などの本当の価値はいくらなのか、不良債権が含まれていない間などを確認します。
このような不良資産の有無のチェックが、一番大きな作業になります。要するに、債務超過の有無を確認しています。
特に増減の激しい項目については、その理由をお聞きします。未払金や仮払金は特に注意しています。
金融機関による資産評価の一例
①売掛金の例
売掛金の回転期間が同業種平均と比べて異様に長いような場合、実際には回収できない債権が含まれているのではないかと疑います。経営者に理由をお聞きした結果、資産性なしと判断することもあります。
②土地・建物などの固定資産の例
固定資産は、必ず時価評価します。また、減価償却がされていない資産は、償却し直して、償却分は収益からマイナスします。
③仮払金
仮払金は、その内容を確認し、将来的に会社に返ってくるものでなければ、資産価値はないと判断することもあります。
決算書と翌月の試算表を比較すると、整合性が合わない項目が見つかります。よく調べてみると、実際は不良資産だったりします。
また、勘定科目内訳書を3期分比較して、同じ数値が並ぶ項目があると、不良資産の可能性を疑います。
積極的に情報を開示してほしい。
Q3 現在のような、どの企業も売上が厳しい環境では、売上については、どのような見方をされているのでしょうか。
A 売上減少の理由が、単価の下落なのか、数量の減少なのか、あるいはその両方なのかを、経営者にお聞きします。
本来は、こちらからお尋ねする前に、経営者のほうから積極的に説明して欲しいのです。しかし、それがなかなかできない経営者が少なくないのが実情です。経営者自らが、売上減少の要因とその対策をきちんと説明できる企業は、経営数値が改善されてくることが多いようです。
Q4 企業から提出されて経営計画についてどこを、どう見ているのでしょうか。
A 企業各付け、定量的な目線でいえば、売上、利益から生み出されるキャッシュフローで10年以内に借入金が返済できるか、それが予想の貸借対照表、損益計算書に反映されているかといった点を見ています。
売上については、数量と単価のどちらを改善の柱に持っていくのか、それが市場性に照らして妥当なのかどうかを確認します。
Q5 経営計画に求めているのは何でしょうか。
A 最初から「とりあえず数字を並べただけ」というような計画を提出されると、金融機関としても非常に困るわけです。
返済に必要となる利益やキャッシュフローを生み出すためには、現在の利益率では、どれだけ売上が必要になるのか、そのために打つべき対策は何かを積み上げた計画を求めています。
経営内容そのものに実現性があることが大前提ですが、経営計画の実現に向かって経営者と従業員にやる気と覚悟があることも重要です。私どもは経営計画を「この計画でやります」という経営者の宣言だと考えています。その宣言を受けて、金融機関は、融資や条件変更させていただくわけです。
月次の数値に興味を持ち原因分析を
Q6 金融機関としては、どのように経営支援をしていくのですか。
A 経営者には、毎月の経営の結果を見返して、それが予定通りでなければ、なぜそうなったかを分析し、その対策を実行していただくとともに、その内容を金融機関に報告して欲しいと思います。その報告をもとに、金融機関からも助言させていただくこともあります。これをモニタリングと呼んでいます。
経営者の皆様には、月次ベースで自社のことに興味を持ち、実績に対して、原因分析をして、その対策も含めて金融機関にしっかりと伝えてください。
代表者の親族である非常勤役員や引退した前オーナー経営者などに、役員報酬や給与などを支払っている場合に、税務調査等において問題にされることがよくあります。
1.税務調査等で問題となる例
中小企業では、家族や親戚を役員や社員にしている例がよくあります(以下、家族役員・社員という)。
家族役員・社員であっても、毎日、フルに勤務しているのであれば、仕事内容と比較してあまりに高額な給与でなければ特に問題になりません。
しかし、毎日出社していない、短時間の勤務である、学生である、遠方に住んでいるなど、フルに勤務していない家族役員・社員に役員報酬や給与などを支払っている場合、税務調査では、勤務実態に支給金額が見合っているかどうかが問題とされます。
2.勤務実態を明確にしておきましょう。
家族役員・社員については、勤務実態が曖昧であると、支払った役員報酬や給与が「不相当に高額である」とみなされる恐れがあります。この場合、「不相当に高額である」部分については損金(経費)として認められません。
中小企業では、「登記上の役員だから」「創業者だから」「今まで支給していたから」などを理由に安易に役員報酬や給与などを支給している例が見受けられます。このような場合は特に注意が必要です。
フル勤務でない家族役員・社員に役員報酬や給与などを支払っている場合には、日頃からその支払に見合う勤務を果たしてもらうとともに、勤務実態を正確に把握しておくことで、税務調査等であってもきちんとした対応ができます。
勤務実態は口頭での説明だけでなく、「1か月のうち何日か」「1日のうち何時間か」「仕事の具体的な内容は何か」等が客観的に説明できるように、業務内容や出勤日、就労時間、支給金額の算定根拠などを記録として残るように、日頃から書類・資料を整理しておきましょう。
3.支払額が相応かどうか
さらに、税務調査等では家族や親族の勤務実態のほかに支払われている役員報酬や給与が勤務実態に対応する金額としてふさわしいかどうかなども厳しくチェックされます。 その他、次のような点にも注意しましょう。
・株主総会や取締役会などの承認決議を得ておく。
・報酬の支給金額や決定方法を各人ごとに決めておく。
・事業年度の途中に恣意的な改定を行わない。
・扶養控除等申告書を提出する。
・支給金額が、勤務実態や業務内容、会社の収益や他の従業員の給与、同業他社に照らして、妥当かどうかをチェックする。
役員報酬は非常勤といえども、支給のための手続きが、もれなく、法令等に則って行われ、その手続きに基づいて決定された世間相場並みの支給金額が毎月定期的に支給されていることが必要です。
残業代は経営者にとって頭の痛い問題であり、無駄な残業を減らしたいものです。
(1)法定外残業等法定内残業の割り増し賃金
①法定外残業の場合
法定労働時間である1日8時間、1週間につき40時間を超えた部分については、時給単価に25%以上の割増率を乗じた金額で計算します。例えば、時給単価が1000円であれば、1250円以上を支払うことになります。
②法定内残業の場合
法定内残業とは、所定労働時間が終了した時刻から法定労働時間(1日8時間)にあたる時刻までの残業をいいます。この時間に対する残業代については、就業規則や労働契約等において社員との間で、あらかじめ取り決めておきます。また、取り決めがない場合は時給単価×1.0(等倍)で計算します。
(2)深夜労働には深夜割増が必要
深夜労働とは22時から翌朝5時までの間の労働をいいます。この時間帯の労働時間については所定労働時間であるか否かにかかわらず深夜割増として25%以上の割増賃金を支払うことになります。
法定外残業が深夜労働となった場合には、法定外残業の25%以上の割増に、さらに深夜労働分の割増25%以上を加算し、50%以上の割増賃金を支払うことになります。
融資の申込みや返済計画の変更した企業に等に対して、金融機関は経営者自身による業績の説明(情報開示)を求めています。では、具体的に何をどう説明すればいいのでしょうか。実際に、金融機関へ定期的に業績の説明を行っている企業の例を見てみましょう。
(A社の概要)
・建設業
・ B 銀行に借入金の返済猶予をしてもらい、経営改善計画を提出し経営改善に取り組んでいる。
・ X 年10月~X1年9月に、売上6億円、経常利益200万円を目標として黒字転換を目指した。
■売上未達成の原因を分析し、対策を説明
X 年6月下旬、A社長がB銀行に出向いて、5月の業績を説明しました。 A社長は5月の売上実績について、4月よりは改善したものの、目標の5000万円に対して4000万円(80%)となったことを報告するとともに、その要因と見通しを次のように説明しました。
大口だったショッピングセンターの増改築工事が震災の影響で4月中旬まで中断したために、予定していた納品が大きくずれ込んだことが影響しました。しかし、現在は、工事が再開したことに加えて震災復旧での受注があるため、6月は4500万円の売上目標に対して、5000万円以上を見込んでいます。
■売上は改善したが、利益率が低下
6月の業績説明では、ショッピングセンターの増築工事の再開と、震災復旧関連の受注によって、4500万円の売上目標に対して実績5600万円と大きく目標をクリアしたこと、売上が順調に推移しており、7月は5000万円~5200万円程度の受注を見込んでいることを報告しました。しかし、原材料の値上がりや大口受注の利益率が悪いことから、売上の伸びほど利益が伸びておらず、その対応を説明しました。
原材料について新たな仕入先を探しており、また、大口の取引にこだわらず、小口でも利益率が高いものは確実に受注していく方針です。
■決算報告で、今後の対策を説明
決算報告では、目標の売上6億円、経常利益200万円に対して、実績は売上6億1000万円、経常利益100万円となり、黒字転換に成功したものの、経常利益が未達となりました。これについてA社長は、今後の対策を含めて次のように説明しました。
復興関連での受注が大きく、売上を達成することができました。しかし、原材料の値上がりや大口取引での利益率の低下が影響し、経常利益が目標に届きませんでした。今後は、復興関連での新たな納品先について、継続的な取引ができるよう重点的に営業訪問を行います。また、原材料の値上がりをはじめ、電気料金や石油などの値上がりが予想されるため、省力化や製造ロスの削減のために作業の無駄等を洗い出しているところです。
■金融機関も社長の姿勢を評価する。
このような社長の説明に対して、 B 銀行の担当者は「決算書の数字だけでなく、現状分析、改善点、具体的な売上の見通しについて、自分の言葉で説明されるので、経営に対する姿勢がよくわかります。」と高く評価しています。
中小企業では、会社が社長から個人資金を借りたり、反対に、社長が会社から資金を借りたりすることが見受けられます。このような場合、税務上、問題となることがよくあります。
会社と社長との間の取引でも契約書を作成しましょう。
会社と社長との間の金銭の貸し借りの際には、その理由等について株主総会や取締役会の承認決議を得て、議事録を残すとともに、「金銭消費貸借契約書」を交わします。金銭消費貸借契約書は、借入金額、利息、返済条件など具体的な内容を明らかにしておきます。利率を決めた際の参考資料も保存しておきます。
会社社長から借り入れる際の利息
会社が社長から金銭を借り入れるにあたっては、無利息でも問題はありませんが、利息を支払う場合には、一般的に適正と判断される利息よりも高すぎると、その高すぎる部分が社長への給与とされ、所得税が課されます。
会社が社長に貸し付ける際の利息
社長が会社から金銭を借り入れる場合には、社長は会社へ利息を支払う必要があります。無利息であったり、支払う利息が適正と判断される利息よりも低すぎると、その低すぎる部分が社長への給与となります。
長期間未清算の社長への仮払金
長期間、精算されていない社長への仮払金は、税務調査で社長への貸付金や給与とみなされる可能性があります。
未精算の仮払金の実態が、明らかに貸付金であれば、社長への貸付金として処理する必要があります。
社長への貸付金は、決算書上は、会社の資産ですが、金融機関から見た場合「現金化できない不良債権」「社長の公私混同」といった視点から評価が下がり、融資の際のマイナス要因になる恐れがありますので注意しましょう。
社長への貸付金は早期に解消する必要があります。
会社が社長から借入
・無利息でも原則として問題はない。
・利息を受け取った場合は、所得税の申告が必要になる。(会社は、利息分を損金として処理することができる。)
・利息が高すぎると、その高すぎる部分が社長の給与となる。
・社長の貸付金は、社長個人の相続財産になる。 社長が会社から借入れ
・無利息の場合、4.3%(現在)で計算した利息が社長の給与となる。
・調達金利を参考に適正な利息を徴収しておく。
税務調査の際、会社が行った売掛債権などの貸倒損失の処理を巡って、その処理が否認されることがあります。貸倒処理の要件を理解しておきましょう。
1.貸倒処理とは
将来、現金で回収される次のような資産(債権など)が回収不能となった場合に、その債券などについて、会計上も税務上も貸倒処理を行います。
債権等の例
・売上債権(売掛金、未収入金など)
・取引先への貸付金・従業員への立替金や貸付金
・貸付金に発生した未収利息
・敷金やゴルフ会員権など
貸倒処理を行うと、決算書上、債券等や当期純利益が減少したり、税務上は所得金額が減少したりします。
2.税務上の貸倒が認められる要件
税務上、債券等の貸倒処理が認められる要件として、「法律上の貸倒」「事実上の貸倒」「形式上の貸倒」の3つがあります。
「法律上の貸倒」とは、民事再生法や債権者集会などの私的整理による債権カットなどです。
「事実上の貸倒」とは、回収先の債務超過や行方不明などで回収できないことが明らかな場合などです。
「形式上の貸倒」とは、取引停止後、1年以上弁済されていない場合などがこれにあたります。
以上の3つの要件のいずれかに該当すれば税務上も貸倒処理が認められることになります。
ただし、事実に基づきその要件を満たしているかどうかを、自社で判断しなければならないこともあるため、慎重な処理が求められます。
後日、税務調査において、会社が行った貸倒処理が、「時期尚早」と判定されたり、寄付金に該当するなどとして、否認されると法人税や消費税などの修正申告を行うことになります。
また、債権等が税務上の貸倒と認められる状況になった場合には、タイムリーに貸倒処理を行う必要があり、意図的に先延ばしたりすることは、利益操作とみなされるので注意が必要です。
そろえておきたい資料
税務上、貸倒処理が認められるためには、会社が自ら回収先が支払不能であることの証明を行わなければならない場合があります。そのため、回収に努力したこと、回収不能と判断した経緯などを説明できる資料をそろえておきましょう。
健康保険・厚生年金保険などの社会保険は、会社や従業員の事情に関係なく加入が義務づけられており(一部の個人事業者を除く)、未加入や脱退は認められていません。もし、会社が社会保険等への加入義務を怠っていた場合、経営上どのようなリスクがあるのでしょうか。
社会保険の届出を怠っていませんか。
社会保険(健康保険、厚生年金保険)は、社会保障制度の一環として、国が運営する公的保険であり、法令によって会社と従業員に加入が義務づけられています。
最近、社会保険の未加入や保険料の未納付などが問題となっており、「社会保障と税の一体改革」を前に、監督機関の調査も厳しくなる可能性があります。
社会保険料は、健康保険と厚生年金保険の保険料を会社と従業員との折半で負担します。仮に、会社が社会保険に未加入だった場合、あとで保険料の遡及納付を求められたり、罰金を科されたり、従業員からの損害賠償などの経営上のリスクを負うことになります。
社会保険料の遡及納付が求められる。
社会保険の加入手続きを行っていた会社は、最大で過去2年分まで遡って社会保険料を納付しなければならない可能性があります。
社員にも過去に遡って保険料を納付してもらうために、社員の同意が必要となり、説明も一苦労ですし、給与関連書類をすべて訂正する必要があります。
また、未加入だった期間は、社員は自分で国民健康保険・国民年金に加入しているはずですから、その差額の精算も大変です。
損害賠償を請求される。
例えば、10年前から社会保険に未加入の場合、加入は最大10年前から認められますが、保険料は2年分しか遡って納付できません。
会社が社会保険に未加入であったことで年金のカラ期間が生じ、社員が「年金受給資格期間に満たない」「本来受給すべき年金額に満たない」などの不利益を被ることになり、その損害賠償責任を負う可能性があります。
実際に、社員が会社に対し損害賠償を求めた例もあります。
社会保険の未加入には、経営上のリスクがあることを十分理解しておきましょう。
社会保険の種類と加入義務
健康保険・・・業務外の事由でケガ・病気になった場合に保険給付される。
厚生年金保険・・・老齢・障害・死亡について年金が給付される。
加入義務
・法人の場合は、社員(役員を含む)が1人以上いる場合に加入
・個人事業でも社員5人以上(飲食業など除く)の場合は加入
・パート、アルバイトでも、社員と比較して、労働日数、労働時間の両方がおおむね4分の3以上であれば加入
平成24年4月1日以後開始する課税期間から、課税売上高が5億円を超える事業者には、仕入税額控除を計算する際のいわゆる95%ルールが適用されなくなります。
課税売上高5億円超が対象。
これまで総売上に占める課税売上の割合が95%以上であれば、仕入税額を控除する際、売上時に顧客から預かった消費税額から、仕入や経費等の発生時に事業者が負担した消費税額を全額控除することができました(仕入税額控除の95%ルール)。
ところが、平成24年4月1日以後に開始する課税期間から課税売上高が5億円超える課税事業者については、95%ルールが適用できなくなり、個別対応方式か一括比例配分方式のいずれかで控除する税額を計算する必要があります。
個別対応方式と一括比例配分方式とは
(1)個別対応方式
事業者が負担した消費税額を「その課税仕入れが何のために使われたものであるか」によって区分し、顧客から預かった消費税額から控除できるものと控除できないものとに分け、控除する税額を計算します。
課税仕入高の用途区分
1.課税売上高のみに対応する課税仕入 消費税を全額控除できる。
2.非課税売上高のみに対応する課税仕入 消費税を控除できない。
3.課税売上高及び非課税売上高の両方に対応する課税仕入れまたは区分不能 課税売上割合を乗じて得た金額のみ消費税を控除できる。
(2)一括比例配分方式
事業者が負担した消費税額の全額に課税売上割合を乗じて控除する税額を計算します。
対象となる事業者の実務対応は
1.非課税売上高を正確に把握する非課税売上高には次のようなものがあります。
・土地の譲渡収入
・土地の賃貸料
・株券や国債などの譲渡収入
・居住用住宅の賃貸料
・受取利息
・従業員等から徴収する社宅家賃収入
・社会保険診療報酬など
2.個別対応方式は用途区分に注意する
これまでは、課税仕入高のすべてについて課税売上高のみに対応する課税仕入れとして消費税を区分するだけで済んでいました。改正後は個別対応方式を採用する場合、販売費及び一般管理費などの課税仕入高を用途区分し、それぞれに応じた消費税の区分を記入する必要があります。
課税売上高5億円以下、課税売上割合95%未満の事業者の影響
1.課税を売上高が5億円近い事業者は注意
課税売上高が5億円を超えるかどうかは当該課税期間の課税売上高で判定することから、これまで課税売上高が3億円や4億円の課税事業者も売上が増加して5億円超になるケースも考えられるため、事前に用途区分をしておくことが必要と思われます。
2.用途区分に注意が必要
今回の改正で用途区分の考え方が注目されたことで、税務調査等では、これまで以上に用途区分の合理性が問われることが多くなる可能性があります。
例えば、不動産賃貸・売買業、工務店、クリニック、保育園などの営業収入に占める非課税売上高が課税事業者や、たまたま固定資産である土地等を譲渡した課税事業者など、当該課税期間の課税売上割合が95%未満となってしまうような場合には、販売費及び一般管理費などの課税仕入高のすべてについて3つの用途区分にしっかり区分しましょう。
赤字経営が続けば、資金繰りが悪化し、会社の存続にも影響をおよぼします。黒字決算は金融機関に対しても有力なプラス材料になります。黒字決算が望ましいですが、もし赤字決算が避けれそうにない場合、決算間際であってもできることはないでしょうか。
社長が先頭に立って社員の意思統一を図る。
仮に今期の赤字決算の見通しから黒字決算に持ち込めるかは、危機感を共有して「何としても今期を黒字にしよう」という全社員の意気込みにかかっており、そのような気運を高めるには社長のリーダーシップが不可欠です。
社長は、社員一人一人と向き合い、「社員みんなの給料や賞与、雇用を守りたい」ことや、黒字決算は金融機関の評価に繋がり、「資金繰りに直結する」ことを訴え続けましょう。今季を黒字決算で終え、社員一人一人の能力が高まり、会社の体質も改善されてゆくはずです。
決算までの残り数ヶ月でできることを考えよう
決算までの残り数ヶ月について、まずやるべきことは、決算までの残り期間の業績予測のチェックです。社長が中心となって部門責任者を集めてミーティングで煮詰めるか、社長と経理担当者が一緒に、部門責任者一人ひとりと確認します。
この段階では新たな対策を盛り込むことなく、通常の努力で実現すると思われる数値を予測します。「このままの状況でいったらどうなるか」という予測です。
その結果が、赤字の見通しの場合、残りの期間に何ができるかを考えます。諦めずにできることを社長以下全員の知恵を出し合って考えましょう。
売上対策
・バーゲンセール等を実地できないか。
・季節商品を臨時に販売できないか。
・営業時間を見直すことはできないか。
製造業、建設業や IT サービス業の例
・納期を短縮できないか。
利益確保対策
・値引きを抑制できないか。
・利益率の高い商品を重点販売できないか。
・物品の購入予定を延期できないか。
・臨時社員の人員配置を見直せないか。
毎年1月31日は、法定調書の提出期限です。法定調書の作成事務についての基本事項、注意点をまとめました。
提出が必要な法定調書
会社や個人事業主等(以下、会社等)が給与や特定の報酬・料金等を支払った場合、その支払先や報酬・料金等の内容、支払金額等を記載した源泉徴収票や支払調書等の書類(法定調書)を作成し、税務署に提出しなければなりません。
税務署は提出された法定調書をもとに、支払先の収入金額を把握することになるため、誤って記載があると、支払先の申告内容に疑義が生じる恐れがありますので、作成にあたっては注意が必要です。
一般に、1月31日までに提出しなければならない法定調書は、6種類あります。
・給与所得の源泉徴収票
・給与支払報告書
・退職所得の源泉徴収票・特別徴収票
・報酬、料金、契約書及び賞金の支払調書
・不動産の使用料等の支払調書・・・家賃や地代、駐車場等の不動産の使用料等を支払った法人と不動産業である個人、支払金額が15万円超 ※法人に支払う不動産の使用料等については、権利金、更新料のみが対象になります。
・不動産の譲受けの対価の支払調書
・不動産の売買または貸付の斡旋手数料の支払調書
※各法定調書ごとに提出義務者や提出範囲が決められています。
法定調書の作成手順について教えてください。
法定調書は、会計帳簿等から支払先ごとに暦年の支払金額を抽出し、集計してください。支払ごとに、次のルールで集計した1年間の支払金額の合計により提出が必要かどうかを判定します。
支払金額は原則として、暦年中に支払の確定したものを消費税等の額を含めて記載します。
未払いの金額がある場合はその金額を支払金額欄に内書きします。
それぞれの法定調書について注意すべき点はありますか各法定調書ごとに、それぞれ次のような注意点があります。
1、給与所得の源泉徴収票・支払報告書
給与所得の源泉徴収票はすでに年末調整において作成されています。その作成されたものから提出が必要なものを抽出します。
1年間に支払った給与のすべて(年末調整をしなかったものを含む)を対象に支払金額や甲欄、乙欄の区分等に従い、従業員毎に提出の要否を判定します。
給与所得の支払報告書は、その受給者(社員等)の住所地の市区町村に提出します。
2、退職所得の源泉徴収票・特別徴収票
役員に支払うことが確定した退職手当等は支払金額にかかわらず、すべて提出が必要になります。
3、報酬・料金等(報酬、料金、契約書、賞金)
支払調書の作成対象となる報酬料金等を法人や個人に支払った場合に、1年間の支払金額が提出範囲に該当するときは、源泉徴収税額が生じているか否かにかかわらず、支払調書を作成し提出しなければなりません。
4、給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
以上の6種類の法定調書のほかに、これらの法定調書を集計した「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」も一緒に提出する必要があります。
作成した法定調書は支払先に送る必要はありますか
法定調書のうち、給与所得の源泉徴収票と退職所得の源泉徴収票については、支払先(社員等)へ交付しなければなりません。
他の法定調書は支払先に交付する必要はありませんが、確認等のために交付することは有効かもしれません。
パートタイムで従業員にとって、「自分自身の年間収入に税金(所得税、住民税)がかかるのか。」「夫の扶養家族からはずれないか?」は気になるところです。パート本人の年収がいくらであれば所得税、住民税、社会保険料等かからないのでしょうか。
1.パート収入が103万円以下の場合所得税はかからない
夫がサラリーマンで、パートとして働く主婦の場合、通常パート等の年収が103万円以下で、その他に収入がなければ、妻本人の収入に所得税はかかりません。
これは、給与による収入(給与収入)から、給与所得控除と基礎控除38万円との合計額を差し引いて、残った金額(所得)に所得税がかかるためです。
パートの給与以外に収入がなく、収入が103万円以下であれば、所得税がかからないことから、「103万円の壁」ともいわれています。
※収入と所得は意味が違う。
収入とよく混同しがちな言葉に所得があります。収入とは、給与の手取り額ではなく、源泉徴収等を差し引く前の金額のことをいいます。そして、この収入から所得税法上の控除である給与所得控除や基礎控除等の各種控除等を差し引いた金額が所得になります。
収入-各種控除等=所得
2.妻のパート収入が103万円を超えると夫が配偶者控除を受けられない
妻のパート収入が103万円以下であれば、夫もわ自身の所得から、38万円の配偶者控除を受けることができます。
しかし、妻のパート収入が103万円を超えると、妻本人に所得税がかかるだけでなく、夫も自身の所得から配偶者控除を受けることができなくなります。
ただし、妻のパート収入が141万円未満で、夫の所得が一定以下など一定の条件を満たせば、夫は自身の所得から、配偶者特別控除を受けることができます。
3.パート収入が103万円以下でも住民税に注意
妻のパート収入が103万円以下であれば、所得税はかからないのですが、市役所等から「個人住民税の納税通知書」が妻宛に届き、どうしてなの?ということがあります。これは住民税がかからない収入が103万円以下ではないためです。
住民税には、所得金額に対して課税される所得割と、所得の額にかかわらず均等の額を負担する均等割とがあります。住民税は、パート収入が100万円以下であれば所得割はかからないのですが、均等割については住んでいる市区町村によって税金のかからない収入が100万円以下、96万5000円以下、93万円以下と異なります。
4.パート収入が130万円以上なら夫の社会保険の扶養家族からはずれる
社会保険では、妻の年収が130万円以上になると、夫の社会保険の扶養家族(被扶養者)からはずれてしまいます。
この場合、妻の勤務先の社会保険、または住んでいる市区町村の国民健康保険、国民年金に加入しなければならず、保険料の負担が発生します。
総務、経理担当者は社内で対象となるパート社員に対して税金がかかる年収のラインや、今年の年収見込額を早めに伝えてあげましょう。
平成24年2月1日に、中小企業の会計ルールである「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」が公表されました。この「中小会計要領」は、大企業と違って、国際会計基準などと連動して変更する必要のない国内中小企業のための会計ルールです中小企業はこれを踏まえて経営を強化することが求められています。
どうして策定されたのか。
中小会計要領が策定された背景には、今後の中小企業政策の方向性が関係しています。平成23年12月に、中小企業庁の中小企業政策審議会、企業力強化分会が「グローバル競争下における今後の中小企業政策のあり方」を公表しました。この中で、人口減少、少子高齢化等による国内需要の減少、アジアをはじめとした新興国との競争激化や、国内大企業の海外移転などといった厳しい内外環境を勝ち抜く「自立的な中小企業」の確立を目指すとしています。
そのためには、中小企業の戦略的経営力を強化する必要があり、今後、我が国の中小企業政策は、戦略的経営力を強化する方向にかじが切られることになります。
戦略的経営力とは
・財務経営力(経営状況を把握し、経営計画を立案する能力)
・資金の確保、調達力
・成長のための知恵、知識、ノウハウ
・国際競争に耐えうる技術力、人材
とりわけ、中小企業に共通する財務経営力と資金の確保、調達力を強化するため、以下の施策を掲げています。
①経営支援の担い手の多様化、活性化
②経営と金融の一体的支援
③財務経営力の強化
特に、財務経営力を強化するには、どうしても一定のルールが必要であり、そのため中小会計要領が公表されたのです。
経営状況の把握に役立つ会計
中小会計要領は、①内部統制が整備されていない、会計担当者もゼロか少人数である、②情報の利用者はおもに金融機関である、③法人税を意識した会計処理が行われている、といった中小企業の実態を踏まえ、企業の成長に役立つ計算書を作成できるように、次のような考え方で、策定されています。
中小会計要領の考え方
・経営者が活用しやすく、理解しやすく、自社の経営状況の把握に役立つ会計・金融機関をはじめとする利害関係者への情報提供に役立つ会計
・中小企業の実務を考慮し、税制との親和性を図った上で、会計計算規則に準拠した会計
・中小企業に過重な負担を課さない会計
また、中小会計要領の特徴の一つとして、経営者が自社の経営状況を適切に把握するため、記帳の重要性が強調されています。つまり、記帳がタイムリーに行われることで、その内容に誤りや脱漏がなくなり、その結果である。決算書の信頼性が高くなるからです。
財務経営力を高める
これからの中小企業には、中小会計要領を適用しつつ、信頼性の高い決算書を作成し、そこから経営者が自社の経営状況を把握し、経営計画を作成するとともに、金融機関等への利害関係者への財務状況や資金繰りの状況に関する説明能力である財務経営力を向上させることが求められます。
そのため、会計事務所から決算説明や経営助言などを受けながら、社長自らが金融機関等に経営を語れる能力を身につけましょう。
欠損金の繰越控除制度は、例えば、当期に発生した欠損金(赤字)を翌期以降の黒字の所得と相殺することにより、過年度の欠損金に対応する法人税、法人住民税、法人事業税を少なくさせることができる制度です。
繰越することができる欠損金は、次のようなものです。
①青色申告書を提出した事業年度の欠損金(青色欠損金)
②白色申告書を提出した事業年度の災害による損失金(災害損失金)など
なお、平成23年度の税制改正により、上記①②の欠損金の控除期間と帳簿保存期間が改正されました。
繰越欠損金の控除期間が7年から9年に延長されたからといって、その期間は赤字を放置してよいというわけではありません。発生した欠損金は次の観点から翌事業年度以降できるだけ早いうちに黒字の所得と相殺し、その損失を取り戻しましょう.
赤字を放置していると
・赤字の垂れ流しは過剰債務につながります。
・赤字にはキャッシュの流出が伴います。
赤字から脱却するには、例えば、役員報酬に減額の余地がある場合、減額することにより社会保険料や代表者個人の所得税の負担が抑えられ、税務上、会社に残った利益も、欠損金との相殺により少なくなります。
このような対策は、できるだけ早い段階に行ったほうが効果は高くなります。会社経営上、早期の赤字解消が望まれます。
欠損金の発生事業年度
平成20年3月31日以前に終了した事業年度… 控除期間7年
平成20年4月1日以後に終了した事業年度…控除期間9年
■労災保険
中小企業の経営者や自営業者でも労災保険に加入できる制度があることご存知でしょうか?
労災保険は、労働者(従業員)が業務中や通勤途上での事故や災害によるケガ、病気、障害等を補償する保険であるため、本来、社長や役員等は加入することができません。
しかし、中小企業経営者、1人親方、自営農家などでぁっても、一定の場合には、労災保険への特別加入が認められます(労災保険の特別加入制度)。
労災保険の特別加入とは?
通常、経営者自身が業務中の事故等によってケガをした場合、その治療代等は全額自己負担(10割負担)になります(業務中の事故の場合は、健康保険が適用されません)。
しかし、労災保険に特別加入していれば、次のような場合、労災保険から補償を受けることができますので、事故等が発生しやすい業種、職種の人は特別加入しておくと安心です。
①負傷した場合
②疾病にかかった場合
③障害が残った場合
④死亡した場合 など
加入できる中小事業主など
①一定の労働者数を常時使用する事業主
②上記①の事業主の家族従業員、役員など
自営業者や自営農家、家内労働者などの場合
1人親方など等の自営業者や自営農家、危険度の高い作業を行う家内労働者でも、労災保険の特別加入の対象となる場合があります。
加入するには
加入には、全国の労働保険事務組合に保険事務を委託する必要があり、同組合を通じて労働基準監督署へ申請します。
労働保険事務組合とは、事業主に代わって労働保険料の申告納付その他労働保険に関する事務手続きを行う団体です。
■退職金制度(小規模企業共済制度)
小規模企業共済制度は、小規模企業の役員が退職したり、個人事業を辞めたりした場合等に備えてその生活資金等あらかじめ積立てておく、経営者等のための退職金積立制度です。
小規模企業共済制度の特色:掛金は全額所得控除できる。
①加入対象は一定の従業員数以下の個人事業主及びその共同経営者、会社等の役員加入できるのは、常時使用する従業員が20人以下(商業、サービス業(宿泊業娯楽業を除く)は5人以下)の個人事業主やその経営に携わる共同経営者、会社等の役員です。
②掛金全額を所得控除できる
掛金月額は1000円~7万円までの範囲で500円刻みで自由に選べます。
この掛金は税法上、掛金全額を契約者個人の所得から控除でき節税できます。
・一括して受け取られる共済金は退職所得扱い
・10年または15年で受け取られる分割共済金は公的年金等と同様の雑所得扱い
・掛金月額は一定の手続きで増額、減額が可能
③掛金は前納でき割引がある。
掛金は前納できます。そして前納月数が12ヶ月以内であれば、掛金全額を前納した年分の所得控除額とすることができます。
また掛金を前納した場合には割引があり、前納掛金に対して、一定割合の前納減額金を受け取ることができます。
例えば今年の12月に小規模企業共済に加入し、同時に来年11月までの12ヶ月分の掛金前納することは可能で、その掛金全額を今年分の所得から控除できます。さらに前納減額金も受け取れます。
④その他共済金の受取は、一括受取、分割受取、及び一括受取と分割受取の併用が可能です。また、加入者には低利の貸付制度(担保、保証人不要)があります。
●資金が足りているか?決算書から自社の安全性を見る
企業の財務面での安全性、すなわち、資金は足りているのか?を決算書から見る方法に、安全性分析があります。強い経営のためには、収益力の高さだけでなく、財務の安全性が高くなければなりません。
企業には、「儲ける力」ともいうべき収益性が重要ですが、安全性も忘れてはいけません。収益性を矛に例えるならば、安全性は盾という関係にあります。つまり、矛と盾の両方が強くなければ本当に強い会社とはいえないからです。財務の安全性を見るための重要な経営指標には、次のようなものがあります。
・流動性比率
・当座比率
・経常収支比率これらは、短期的な資金繰りの安全性をみる指標で、支払い能力の大きさを表します。
・自己資本比率
・固定長期適合率長期的な財務構造の安全性をみる指標で、資金調達の健全性を表します。
1.短期的な資金繰りは大丈夫か?流動比率・当座比率をチェックする
・高いほど短期的な資金繰りの安全性が高い。
・流動比率は150%超、当座比率は120%超が望ましい
短期間(1年以内)に支払・返済しなければならない流動負債(支払手形、買掛金、短期借入金等)は、基本的に短期間に現金化される流動資産(現預金、受取手形、売掛金、棚卸資産等)が返済の原資になります。流動比率と当座比率によって、短期的な資金繰りの安全性をチェックしましょう。
①流動比率
流動負債に対する流動資産の割合です。一般に、この比率が低いほど短期的な支払能力が弱く、安全性が低いということになります。ただし、流動資産の中に、現金化の難しい不良資産・不良在庫が多く含まれていると流動比率が高くても安全性は低いということになります。流動比率が高くても安全性に問題があるケース
・売掛金の回収が遅いか、不良債権がある。
・在庫が過剰か、不良在庫が多い。
・買掛金の支払いサイトが短かすぎる
流動比率が低くても安全性に問題がないケース
・売上の大半が現金売上・売掛金の回収サイトが短い
・在庫の回転率が早い
・買掛金の支払いサイトが長い
当座比率
流動比率よりもさらに短期の支払い能力を見るための指標です。流動資産の中から、現金化に最も時間のかかる棚卸資産などを除いた当座比率が、流動負債に対してどれだけあるかを見るものです。
2.資金ショートの恐れはないか。 経常収支比率をチェックする
・資金繰り改善には、100%以上必要
・100%以下だと黒字でも、資金ショートの恐れあり
経常収支比率は、経常支出に対する経常収入の割合です。これが100%を下回ると、経常収入よりも経常支出のほうが大きいことを意味し、収入の不足分を借入金等でまかなうことになります。
反対に100%を上回っていれば、それだけ資金に余裕があるということであり、借入金の返済や設備投資、資金の貯蓄等に充てることができます。
3.借入金への依存度は少ないか?
・最低でも30%超が望ましい
・自己資本不足は債務超過の危険性大
自己資本は、倒産という大波から会社を守る最後の防波堤といえます。したがって、経営状態が良好な時には、自己資本の充実をはかることが大事です。目標とすべき目安は、50%くらいです。自己資本比率が低いとそれだけ債務超過に陥る危険性が高くなり要注意です。
4.設備投資などの資金調達は健全か? 固定長期適合率をチェックする
・原則は100%以下、80%未満が望ましい
・100%超えると資金繰りに影響する
投資資金の回収が長期間に及ぶ設備投資(固定資産への投資)は、返済が不要な自己資本ですべてまかなえることが理想です。しかし、現実には、自己資本でまかないきれず、その不足分を返済期間の長い長期借入金等の固定負債でまかなうことになります。そこで固定長期適合率をチェックします。100%以下であれば、自己資本と長期借入金等でまかなえている望ましい状態にあるといいます。100%を超えていれば、資金調達の一部が短期借入金等でまかなわれていることになり、短期的な資金繰りの安全性が損なわれている状態にあるので改善が必要です。